
名もなき毒 (カッパ・ノベルス)
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名もなき毒 (カッパ・ノベルス) のカスタマーレビュー 
身近にある毒に侵されそうになった時、人はどう立ち向かうのか
(2009-11-29)
私は普段小説、ましてサスペンス小説は殆ど読みません。手口が残虐な人殺しばかりが面白おかしく書き立てられているように思えるからです。しかし宮部さんの小説は比較的よく読みます。特に「模倣犯」を夢中になって読んで以降、宮部さんのサスペンス小説が好きになり、本書も引き込まれるように夢中になって一気に読み終える事ができました。
「サスペンス小説」というと語弊があるかもしれませんが、宮部さんの小説に登場するのは、主人公も、その家族も、職場の人たちも、事件の中で出会う人たちも、圧倒的多数は至極平凡な人たちです。様々な悩みや問題を抱えながらも日々一生懸命に生きている、ごく平凡な人たちの、真っ当で立派で尊い生き方。それが宮部さんの小説で最も丁寧に力を入れて描かれている事です。同時にそうした平凡な日常がどれほど呆気なく破壊されるものなのか、主に被害者である女子高生と主人公との交流を通して、丁寧に描かれています。
人間は誰でも心の中に毒を持っています。土壌汚染、シックハウス症候群、毒物サイト、いじめなどの社会問題も、人間の持つ毒によって引き起こされるものでしょう。多くの人たちは日頃は心の中の毒を抑えながら生きていて、無意識に毒を抑える術をもっています。しかし中には本書の犯人たちのように、毒を抑えられず、他者に毒を発散して苦しめる人間がいる。その毒に侵され、傷を負い苦しみ続けている被害者がいる。人間はどれほど無力で、どれほど簡単に毒に侵されてしまうのか、毒に苦しめられた被害者とどう向き合い、大切な人を守るために毒に対してどう立ち向かえばよいのか、色々考えさせられます。
色々書きましたが、本書はサスペンスがむしろ嫌いな人、社会問題や人間の尊さや弱さについてじっくり考えてみたい人に、強くお薦めします。一応「誰か」の続編ではありますが、前作を読んでいない人にも、内容は十分理解できるのでお薦めしたいと思います。
人間社会が生み出す「毒」
(2009-07-07)
人間社会或いは人間関係が生み出している「毒」。
それは、格差社会から生まれるものかも知れないし、もっと別の社会システムから生み出されるものかも知れません。
そうした「毒」に侵されて、社会の中に溶け込めない人たちが増えているのかも知れません。
毎日の新聞を読んでいると、ふとそんな気がしてきます。
もともとがそんな「毒」が元で引き起こされた事件だけに、何のトリックもありません。
従って、所謂「推理小説」の面白さを求めてはいけません。
むしろ、社会問題を扱った「一般小説」或いはせいぜい「犯罪小説」と言うところでしょう。
でも、ストーリー・テラーである作者の力を遺憾なく発揮して、読ませる小説になっています。
結構長い小説なのですが、ノン・ストップで読みたくなる小説です。
私は正月より年末が好きだった
(2009-06-21)
久々に宮部ワールドに引き込まれました。作品の中盤,遅々として進まない平坦な流れ…登場人物によって語られる(緻密な取材に基づく)社会問題の解説。先を知りたい読者にとっては少々つらい一時。しかし,こここそじっくりと読まなくてはいけません。そして突然の展開。「えっ! えええっ!」。これがたまりません。宮部さんの作品は単なる推理小説ではありませんよね。犯人が誰?,トリックが何?,なんて読者は期待していません(?)。宮部さんが尊敬する「松本清張」氏の作品に少しずつ近づいているのではありませんか?
深い・・・・
(2009-05-24)
夕方購入し、一気に読んでしまいました。物語自体の展開は途中から少し間延びした感じがありましたが、本書が取り上げている人間の「毒」というテーマが読後胸に迫ってきます。
僕の中にある「毒」はなんなのか?と、深遠な気持ちになりました。
ミステリーとしての完成度が最高とは思いませんでしたが、人によっては自分の内面と向き合う機会を持てる、良い本だと思います。
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